この記事を読むと?
相続における預貯金の払い戻し制度について知ることが出来ます。急な葬儀で費用が必要になり悩まれている方や、被相続人の預貯金はそういった費用に充てていいのか知りたいという方などにお役立ていただける記事になっております。是非ともご参考にして頂けたらと存じます。(2021年8月現在)
現状と改正前の状況
2019年の7月から遺産分割協議が終わっていなくても、対象となる預貯金を一定の範囲内で払い戻しすることが可能になりました。これを預貯金の払い戻し制度と言います。
改正前の状況としては、遺産分割協議が終わるまで相続人単独での払い戻しは不可能でした。これにより、被相続人の死後に資金が必要になった場合、相続人全員の同意がなければ預貯金の払い戻しをすることが出来なかったわけです。
預貯金の払い戻し制度について
前述の通り、被相続人の死後に資金が必要になることは少なくありません。そういったことに対応する為、預貯金の払い戻し制度が出来ました。必要書類や払い戻し限度額などは、それぞれ以下の通りになります。
☆ 必要書類
・ 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
・ 相続人全員の戸籍謄本
・ 払い戻し希望者の本人確認書類 etc.
☆ 払い戻し限度額
・ 相続時の預金残高 × 3分の1 × 払い戻し希望者の法定相続分
・ 上記計算式から上限150万円
☆ 注意点
・ 払い戻しを受けた相続人は、遺産を一部分割で取得したものとみなされます。これは、払い戻しを受けていない相続人との公平性を図るための措置になります。
実際のところ、戸籍謄本等を収集するには時間がかかります。ですから、早急に必要となる葬儀費用として払い戻しの制度を使うことは難しいかと考えられます。残されたご家族の生活資金に充てられることの方が多いかと思います。
預貯金債権の仮分割の仮処分
預貯金の払い戻し制度では、150万円という上限があります。しかし、もっと多くの資金需要が出てしまうこともあります。そうなると、預貯金の払い戻し制度ではカバー出来なくなります。そこで、家事事件手続法の仮分割の仮処分というものの要件部分が緩和されました。預貯金の払い戻し制度のような定められた上限額はなく、遺産分割調停もしくは審判の申し立てがあり、権利行使の必要性と他の相続人の利益を害しない場合、預貯金債権の全部または一部を取得出来るというものです。
まとめ
以上が、預貯金の払い戻し制度についてでした。遺産分割協議が終わらなければ、払い戻しが出来ないという煩わしい点があります。払い戻し制度を活用していくのも良いかと思いますが、より早く口座凍結解除をしていくのが良いでしょう。その為にも、遺言書を作成しておけば、遺産分割協議・遺産分割協議書の作成の手間が省けます。弊事務所でも、遺言書原案作成サポートを行っております。お問い合わせの上、是非ともお気軽にご相談頂けたらと存じます。